受験におけるあなたの成果は、ほかの何よりも「戦略」によって決まります。
大学受験は高校受験とちがい、大学によって科目も問題も変わります。だからそれに合わせてどう勉強するかという戦略が必要です。
正しい受験戦略とは何か?
戦略は、計画のことではありません。
勉強の予定のことでもありません。
学校で「勉強予定表を立てましょう」と言われ、よくわからない紙によくわからないまま勉強予定を書かされた経験はありませんか? 家に帰ってから勉強しようと思って読み返しても実際にあてにすることはないですよね。
誤解されたら困るのではっきり言っておきたいのですが、そういう役に立たないもののことではありません。
あるいは、カリキュラムのことでもありません。
カリキュラムというのは、授業の予定のことです。どんな中身の授業を受けるのかということしか言っていません。戦略は、もっと深いものです。
たとえて言えば、カリキュラムは給食のメニューです。ごはんかパンか、おかずは野菜炒めなのか焼き魚なのか、といった「どんな食べ物が出てくるか」を表しているだけです。
戦略は、同じたとえで言えば、必要な栄養素をもとに、どんな料理を出せばいいかな、どんなメニューを作れば栄養が足りるかな……と考えることです。ちょっとたんぱく質が足りてないから肉を増やそうかとか、いやこれだと野菜不足になるなとか、カロリーが高すぎるとか考えて、あなたに必要なメニューを作ることです。
戦略があることで、必要なメニューがわかる、つまりあなたが今何をすべきなのか、これから受験に向かって何をすればいいのかがわかります。
具体的な受験戦略とはどういうふうに作るものかといいますと、
・志望校の情報を収集して、
・合格に必要な力(点数)を科目ごとに割り出し、
・今の実力を比較して足りないものを身につけるために、
・何をどの順番で、どれくらい勉強するかを決めていく
戦略は具体的であればあるほど価値があります。
こういった戦略がはじめにあるのとないのでは、勉強の効率がまったくちがいます。
なぜなら、戦略がないと、ただ学校や塾から与えられたものをやるとか、目についた問題集をやるとかになってしまいます。これだと、本当に必要なことが抜けたり、逆にむだなことをやることになったりしてしまうからです。
ふたたび先ほどのメニューのたとえを使いますと、戦略がないと、一見おいしそうなものを食べている(=なんだかよさそうな授業は受けている)のだけど、実際には栄養素が足りていないとか、カロリーオーバーになってしまっている(=必要なことが抜けたり、むだなことをやっている)ことになります。
なぜ戦略を立てるべきなのか?
1|何を勉強すればいいかがはっきりわかる
もちろん、いちばん大きな理由はこれです。上でも書きましたが、今何をすべきなのか、これから受験に向かって何をすればいいのかがはっきりわかることです。
でも、戦略を立てるべき理由はそれだけではありません。
2|合格の可能性が数値で見える
なんとなく無理なんじゃないか……と諦めていた大学が、「意外と行けるんじゃないか?!」となることです。何点とれ たらいい、というのが実際の数値でわかるので、偏差値や判定だけで見れば難しそうな大学でも、計算してみたら「なんとかなりそう」となる場合もあります。
実際、私が後期試験で九大理学部に出願したときも、判定は厳しめでした。でも、センター試験の持ち点を使って二次試験で必要な点数を逆算し、過去問にもあたって、「これならいける」と判断しました。
3|途中でブレずに勉強できる
やるべきことがはっきりしていないと、勉強を進めていくなかでどうしても、「あれも必要なんじゃないか」「不安だか らこれもやっておこう」とあれこれ手を出したり、迷走したりしてしまうものです。
戦略にそって勉強を進めれば大丈夫、という安心感があるので、途中でブレずに勉強できます。はっきりとした計画が あるので、そこから逸れてしまったときにもすぐに軌道修正することができます。その結果、余分な労力も減っていきま すし、そもそも必要な分だけ勉強すればいいので、最大限効率を上げられ、合格可能性も上がっていきます。
戦略のない受験勉強は、遠回りをする可能性が高い
プロと立てる戦略の重要性
1|一人でやるよりも時間が節約できる
受験戦略を学び、それをもとに計画を立てる、ということ自体はもちろん一人でもできます。けれども、ふつうの高校 生がやろうと思って 1 週間はかかることを、「受験戦略」をよく知っている人なら 1 時間でやってしまいます。
受験戦略の話を少しくらいなら知っている、という高校生は、それなりにいるはずです。でも……
実際にそれにしたがって計画を立てて勉強をしている人、となると、一気に数が減ってしまいます。どういうことでしょうか?
億劫なのです。それだけ時間をかけて(しかもそのあいだはまともに勉強できない!)まで計画を立てても、その計画 通りやって、果たして上手くいくのかもわからない……、計画通り進められるのかも不安……、というふうに、「やらなく てもいい」理由ばかりが浮かんできて、先延ばしになっているのです。
だから、はじめに言った「1週間」は、もしかしたら「1ヶ月」だったり「半年」だったりするかもしれません。それ がたったの1時間で解決してしまいます。
2|現実的な得点目標を立てることができる
合格最低点を参考にして、「合格に必要な点数」を計算して、じゃあその点数をとるためには各科目で何点ずつとればい いのか、科目ごとの得意・不得意なども考慮して配分します。ここまでなら、自分でできそうです。
で、その点数、本当にとれるのか?
ということを確認しなくてはだめですね。だってそうでしょう。仮に 100 点満点のテストで、最高点が 60 点くらいだったとして、いくら得意科目だからといって80 点をねらうのは無茶というものです。でも、入試問題のレベルや特性を、 自分で判断するのはさすがにきつい。この、試験問題の難易度や特性をコメントしてもらうことで、より現実的な得点目標を立てることができるのです。
3|目標がはっきりするので、戦略がすっきり立つ
さて、必要な点数がわかったら、次にやることは戦略を立てます。科目ごとに、実際に何を使って、どんなペースでやっていくのか、を割り振っていきます。
このとき、目標がはっきりしていることによって、スムーズに、しかも合理的に計画立てを進めることができます。これが 3 つめのいいところです。
計画を立てるときに一番大事なことは、その計画をもとに、今からでも勉強が始められることです。つまり、ぼんやりとしたイメージではなく、目標とする点数をとるためにはどんな力が必要で、それはどの問題集をどの程度解けるように なることなのか。その力を身につけるためには、何をどんな手順で進めていけばいいのか、どのくらいの時間をかけてやるのか、で、実際に今日から何をやればいいのか、というところまではっきりさせなくては意味がありません。
目標がはっきりすることで、戦略がすっきり立つのです。
4| 受験勉強に対して前向きになれる
気持ちの面でもいいことがあります。それは……
まず、なんといってもモチベーションが上がる。目標がはっきりしていて、それを達成するために何をやればいいのか がわかる、そしてそれが今すぐにでも始められる。このことで、受験勉強に対して「その気」になれる、というのが、勉強を始めるにあたって一番大きなことだと思います。
受験勉強を始めないといけないのはわかっているけれど……何をやっていいのかわからないし、周りのひともまだ始めていないっぽいし……と、うだうだしてしまうもの。それが「受験戦略」をもとに立てた見通しのよい計画だから、それ に沿ってやっていけばいいんだ! と思えてしまえば自信につながりますし、これで大丈夫なんだ、という気持ちで、迷 いなく勉強にむかえるのです。もちろんその分、集中力も増すでしょう。勉強時間も自ずと増えていくかもしれません。 効率・時間の両面から、勉強の質を高めることができます。