九州大学工学部は、Ⅰ群からⅤ群までの5つの群と、入学後に専門分野を決定できるⅥ群の計6つの群で構成されています。

Ⅰ群:電気情報工学科                               

Ⅱ群:材料工学科・応用化学科・化学工学科・融合基礎工学科

Ⅲ群:機械工学科・航空宇宙工学科・量子物理工学科・融合基礎工学科

Ⅳ群:船舶海洋工学科・土木工学科・地球資源システム工学科

Ⅴ群:建築学科

Ⅵ群:2年次で選択

 このようにⅠ群~Ⅴ群の中でさらに学科に分かれています。Ⅵ群では、Ⅰ〜V群の中から、入学後に自分の進みたい群を選択することができます。一言に工学と言っても幅広く、受験の時点で興味のある分野を決めきれない人は少なくないでしょう。Ⅵ群はそんなあなたが“まだ見ぬ興味”を大学で見つけるための、貴重な選択肢です! この章ではそんな工学部Ⅵ群について、ここでしか聞けないⅥ群生のリアルな声を踏まえて紹介していきたいと思います!

VI群から各学科群に分かれるプロセス

 まず始めに、Ⅵ群生のカリキュラムについて簡単に紹介します! 1年生の間は工学の基礎を幅広く学び、2年生に進級する際に、それぞれの群に分かれて進学します。どこの群に配属されるかは、希望調査と1年次のGPA(大学での成績)に基づいて決められます。2年後期からは、もとからその群にいた人たちと同じように各群の中からさらに学科を選択します。なお、Ⅰ群とⅤ群は学科の選択はありません。

実際にⅥ群生に聞いてみました!

 これを読んでいる人の中にも「将来どんな仕事がしたいんだろう?」「大学で何を専門に学べばいいんだろう?」と悩んでいる人はたくさんいるのではないですか?! Ⅵ群に進んだ先輩たちもみなさんと同じような悩みを抱えていました。彼らがどのような理由でⅥ群を選び、大学生活をどう過ごしているのでしょうか。さあ、Ⅵ群に入った先輩たちの経験を見ていきましょう!

(1)Ⅵ群に進学した理由

 今年Ⅵ群に入ったばかりの1年生に聞いてみると、「高校生のときに工学部のどの分野に行くか悩んでおり、結局決められなかったから」ということでした。「案外消極的な考え方やん!」と思った方もいるかもしれませんね。そうです! 行きたい群が明確に決まっていないからと思い悩む必要は一ミリもないのです! Ⅵ群に入ってからじっくりと進みたい群を考えればいいんです。 

 他の方の回答でも、同様の回答が多く見受けられました。工学は専門分野が非常に広く、具体的にどれを選べば良いか迷ってしまう人が多いようですね。中には、「機械工学に興味があったが、化学が得意で迷った」というように、好きなことと得意なことに差があって悩む学生もいました。「Ⅰ群かIII群かで迷っていたが、最終的に一つに絞れなかった」というように、特定の分野に漠然とした興味があっても、最終的に決めきれなかったからこそ、このⅥ群という選択肢を選んだのです。

(2) 現在の群・学科を選んだ理由

 アンケートの結果では、「1年間様々な工学分野に触れることで、自身の興味が明確になり、その分野を深く学べる群・学科に進んだ」という声が多く聞かれました。みなさんも、大学に入ってから「本当にやりたいこと」を見つけてみませんか? 例えば、情報系への興味と就職率の高さからⅠ群(電気情報工学科)を選んだ先輩や、得意分野を活かすためⅡ群(応用化学科)へ進んだ先輩もいます。自分の興味や得意分野に沿った群・学科選択をしている人が多いようですが、中には「比較的楽だから」という理由で群・学科を選択しているⅥ群生もいました。そのⅥ群生の話では、大学では勉強だけではなく、インターンシップなど自分がしたいことをすることも大切だと考えて選択をしたそうです。これはまさにⅥ群生にしかできない強みですね!

(3)Ⅵ群のメリット

情報収集の機会 

 Ⅵ群には各群の実情や将来像を直接聞ける「先輩交流会」と「研究室見学会」というものがあります。先輩交流会では、普段はなかなか聞けない各群の「大変さや裏話、将来の展望」などについて、率直な意見を聞くことができます。また、研究室見学会では、実際に研究内容を見せてもらえるので、自分の目で確かめて進路を考えることができます。しかし、情報源はそれだけではありません! Ⅵ群の最大の情報源といえるのは同じⅥ群生です! Ⅵ群生はそれぞれの選択でⅠからⅤ群に進学していきます。つまり、Ⅵ群には幅広い工学分野のそれぞれに興味関心を持つ仲間達がいます。専門分野を問わず、様々な仲間と将来や専門分野について語り合えるのは、かけがえのない財産になるでしょう!

1年間の進路選択の猶予

 ここまでもお伝えしてきた通り、Ⅵ群生には1年間大学生活を過ごしてから、群・学科を選択することができます。1年間大学生活を過ごしてみて想像と違ったなと感じることはよくあることです。少しでも群の選択に迷いや不安がある人はⅥ群を選択してもいいかもしれません。しかしながら、Ⅵ群にもデメリットはあります。是非(4)のデメリットも参考にしてみてください。

(4) Ⅵ群のデメリット

GPAのプレッシャーと競争の激しさ

 Ⅵ群の最大のデメリットと言っても過言ではないのがGPAのプレッシャーと競争の激しさです。群の振り分けは、希望調査とGPAによって決められるため、人気のⅠ群やⅤ群に進学したい人は高いGPAが求められます。実際にⅥ群生からは「特にテスト前はGPA戦争とも呼ばれ、蹴落とし合いも発生する(例えば全然勉強してないように見せかけてめっちゃ勉強しているなど……)」というシビアな声も聞こえました。受験勉強を頑張って入学した後も、今度はその勝ち残った人達でまた競争をしなければならないという厳しい世界でもあります。GPAが低いと興味の無い群に配属され、3年間を棒に振ってしまうという危険性もはらんでいます。

モチベーション維持の難しさ

 希望の群に進むには、入学してからの1年間も高いGPAを維持する必要があるため、モチベーションの維持が大切になります。しかし、Ⅵ群は入学後に進路を決めるからこそ、明確な目標がないとモチベーションを保つのが難しい場合があります。高校までは受験という大きな目標がありましたが、大学では「何のために、何を頑張るのか」を自分で見つける必要があります。目標が定まらないまま周りの空気に流されてしまうと、希望しない群に配属されたり、大学生活そのものが中途半端になってしまったりします。筆者の所感ですが、入学時は高い志を持っていても、時間が経つにつれてだらけて授業に来なくなる人はⅥ群生でなくても少なからず存在します。当然ですが、出席しないとGPAは下がりますし、何より大学4年間が実りのないものになってしまうので、自己管理の大切さは強調しておきたいです。せっかくお金を払って大学に通うなら、意義のあるものにしたいですよね。

Ⅵ群はこんな人におすすめ

 ズバリ言うとVI群は、「工学の様々な分野に興味を持ち、大学に入ってからも高い志をもって勉強に励むことができる人」に特におすすめです。受験時点でまだ具体的な群を決めきれない人や、じっくり考えて将来を決めたい人にとって、1年間の猶予は大きなメリットとなるでしょう。特に、複数の群に関心があるものの、まだ最終決定できていない人には、VI群が最適な選択となるはずです!

 中には「自分は大学に入ってからも高い志を持って頑張れるのかな」と思う人もいるかもしれません。これは筆者の個人的な考えですが、絶対にこの群が良いと決まっていない人はもれなくⅥ群に向いていると思います。大学に入って1年間しっかりと勉強をすると決めてやり遂げるという経験ができた人は、たとえ希望の群に入れなかったとしても残りの大学生活を価値あるものにできると思います。

最後に

 VI群は、入学時点ではまだ将来の専門分野を決めきれていないけれど、大学で真剣に学び、自分の可能性を広げたいと考えるみなさんにとって、理想的な選択肢となるでしょう。1年間の猶予期間を最大限に活用し、豊富な情報収集の機会を通じて、自身の興味と得意分野を見極めることができます。しかし、その裏には高いGPAを維持するための努力と、学内での競争が存在するのも事実です。メリットとデメリットを天秤にかけてたくさん考えてみてください! これまでの文章を通して、群選びで迷っている人に新たな選択肢としてⅥ群を提示できるとうれしく思います。

<Column>自分にぴったりのコースを見つける!芸術工学部「学科一括入試」の魅力

 九州大学芸術工学部にも工学部と同じように、入学時に特定のコースを選んで入る方法と、入学後にコースを決められる「学科一括入試」があります。

実際に「学科一括入試」の学生に聞いてみました!

【学科一括入試を選んだ理由】

・興味のあるコースが複数あり、入学後に1年間考える猶予がある点に惹かれた

・音響が第一志望だったが、共通テストの結果や将来像を考え、学科一括を選択した

・複数コースを横断的に学ぶことで柔軟な発想力を身につけられると思った

【学科一括入試を選んでみての感想】

・コースを決める過程で、自分の将来についてしっかり考える時間を持つことができた

・1年間かけてじっくりと考えてコースを選ぶことができた

・大橋キャンパスにあるすべてのコースの研究施設を見て回ることができた

 学科一括は、「芸術工学のどの分野に進むべきか、入学時には決めきれない」という人に最適な制度です。1年間で広く学び、実際に見て、話して、体験してから進路を決められるため、納得度の高い選択ができます。自分に合った学びを見つけたい人には、まさに理想の入口です。