ページ数の都合で、冊子版には「九大生100人の受験勉強 生物」のページを載せられませんでした。そのため、ここで「九大生100人の受験勉強 生物」の完全版を公開します。
問題分析
● 大問数は5題。
● 記述問題や実験考察問題が多く、生物のメカニズムに基づいた考察力が問われる。なお、2023年・2024年は実験考察問題が大問1つ程度にとどまっていたが、2025年は実験考察問題が大問4つであった。
● 物理や化学に比べ、例年、論述の問題数も文字数も格段に多い。しかし2025年は論述問題が大きく減り、60〜80字の論述が2題(例年5題前後)、30〜40字の論述が2題のみにとどまった。その代わりに実験考察問題が増え、問題の文章量も増えている。
● 2025年が簡単になったわけではない。点数データと比較すると、記述量は減ったものの、考察問題が増加したことで全体としてはむしろ難しくなったと言える。考察問題に時間がかかった(解ききれなかった)人が多かったと推測される。
● 九大生物は時々傾向がガラッと変わる年がある。これまでも、出題され方が変わるとか、記述量が急に増えるとかが起きている。2025年は平均点も大きく落ちているため、形式がまた見直される可能性は高い。
● とはいえ、もともとの出題傾向として、記述と実験考察問題重視で、「生物のメカニズムを理解していること」が前提なのは毎年共通。問題傾向が変わっていくとしても、「メカニズムの理解」に力を入れた勉強をするのが良いことは変わらない。

合格者平均点・問題難易度
● 記述量は減少したが、逆に実験考察問題が増加した上に分量も多かったため、合格者平均点も71.32点/125点(n=37人)と、昨年よりも20点ほど下がった。
● 過去3年の推移(2023年91.5点→2024年95.5点→2025年71.3点)を見ても、難化というより、やさしかった過去2年から平年並みに戻ったと考えるのが妥当か。
とるべき点数・目指せる点数
● 論述問題・実験考察問題が多いため、例年の難易度であれば100点越えは大変。生物がかなり得意な人でも100点まで、一般的には75〜90点を目標にすると良い。
● 薬学部を生物で受験する人は90点以上を目標としたい。
論述問題の採点の厳しさ
● 昨年までの記述が多かった年のデータから言えば、採点はあまり厳しくないと考えられる。
九大生100人のアンケート結果

生物が得意な人の九大対策
● アンケート結果にもありますが、自分なりに図を描いて説明してみるとか、語句を説明してみるといった、自分の頭からアウトプットするトレーニングを積みましょう。単純に知識をインプットするのではなく、知識を体系化(メカニズムとして理解)するのが目的です。とくに九大生物は要求レベルが高いので、自分で説明する癖をつけることが効果的です。
● 知識の整理・体系化をしたいなら『基礎問題精講』(旺文社)から演習を始めましょう。もしそれで物足らなければ『標準問題精講』(同)や九大・旧帝大レベルの過去問。あるいは、九大の生物はレベルが高い問題が多いので、東大の過去問から簡単めのものをやるのも良いでしょう。
生物が苦手な人の九大対策
● 九大の問題は全般的にレベルの高い問題ではあるものの、実は基本問題レベルのものも入っています。「解ける問題だけ解いて点を拾う」という作戦でいくなら、過去問で「これは解ける」というものを見つけて訓練するといいでしょう。
● 基本問題レベルのものを拾えるようになるには、『基礎問題精講』(旺文社)をやりましょう。この一冊をきちんとやりきって、知識問題などであれこれ拾っていくと、得点4割弱にはなります。まずはここを目指しましょう。
● もう少し点を伸ばしたい人は記述と考察問題の対策に取り組むといいでしょう。レベルの手頃な問題集としては『大森徹の生物 記述・論述問題の解法』(旺文社)を推しておきます。説明もわりと丁寧です。
生物 Q&A
Q.生物選択の人は物理と比べて不利だと聞きましたが、本当ですか?
A.まず、一般論として、生物を得点源にしたい人にとっては不利といわれます。物理が得意な人ほどの高得点は取りづらいからです。
物理が得意な人と、生物が得意な人で比べてみましょう。物理は、生物に比べて論述問題がかなり少ないので、満点を狙える科目です。それに対して、生物は論述が多く、いくら得意でも満点は無理でしょう。そういう意味で、二次試験では物理より生物のほうが「安定して高得点をとりづらい」と言えます。
一方、生物は「ほどほどの点数を取れれば良い」(他の科目で稼ぐ)人にとっては、不利ということはなさそうです。拾える問題を冷静に処理さえすれば、目標点数を大幅に割り込むことは起きづらいからです。
ただし、2023・2024年の九大のように、生物の方が高得点が出る場合も時々あるので、必ずしも不利と言い切れない部分もあります。
Q.生物は好きなほうなんですが、なかなか論述が書けません。どうしたらいいですか?
A.論述が書けない人には、2種類あります。
①そもそも問題で問われていることがよくわからず、書くべきことの見当がつかない
②選択肢問題(共通テストタイプ)はできるが、自分の言葉では書けない
どちらのタイプかによって、やるべきことが変わります。あなたはどちらでしょうか。
①前者は、実験問題を読み解く演習をしたり、思考力を問われる問題への耐性をつけたりするところからです。生物のメカニズムにのっとって考える、説明するようにしてください。「たぶんこういうことを書けばいいかな」と思い浮かぶようになるまで、考えるクセがつくといいですね。問題集をやるなら、苦手な人の対策でもあげた『大森徹の生物 記述・論述問題の解法』(旺文社)が手頃かつ丁寧でいいと思われます。
②後者は、いきなり答案を書こうとしているのが原因だと思われます。できるようにするためには、小論文と同じように、書くべきことをメモしてみて、それをつなげていきましょう。そして、必要な字数になるように調整していきましょう。制限字数に届かないなら、何か見落としている項目があることが多いし、逆にはみ出してしまうなら、余計なことを書いてしまっていると判断しましょう。
