どこかで見たようなタイトルですみません(笑)。
ズバリ、九大版「ビリギャル」のお話です。

塾長の児玉です。
これは、以前、元岡教室の地元の地域紙に寄稿を求められて書いたお話です。せっかくなのでここに再掲載します。

内容的にはタイトル通り、数学が400人中398番、高3夏までずっとD判定だった杉本さん(仮名)が九大研に通って九大法学部に合格した、というミラクルをおこした話です。

でも、本家ビリギャルと違うのは、AO入試や推薦入試ではなく、本当にセンター試験と二次試験を受けて学力で合格しているところです。杉本さんの方がすごいんですよ。(笑)

杉本さんと九大研は、どうやってそんなことを可能にしたのかをお話しします。まあ聞いていってください。


杉本さんとはじめて面談したときのお話から始めましょうか。

去年のことです。(※執筆時基準)

いつものようにこれまでの成績をみせてもらったり、得意な科目、苦手な科目、いつごろから苦手か、などなど勉強の状況をいろいろ聞いたりしていくと、

  • 高1のはじめから数学がわからなくなり、定期テストで400人中398番だった。その後も赤点が続いている
  • 今までの模試では九大法学部はD判定ばかり

ということでした。
他の塾にも話を聞いて回ったけど、この成績や判定を見せると、どこでも先生が苦笑いになったり、遠回しに断られたりしたそうです。

ですが私は、こういう人を見るとかえって燃えてきます。

できる人を教えるのもそれはそれで面白いですが、やっぱり普通に考えたら合格は難しそうな人、でもどうしても行きたい大学があると言う人を教えることこそ塾の存在意義だと思うからです。

それでなんとかしたいと思ってあれこれ考えて、「これならきっとなんとかできる」と思いました。

たしかに、難しいといって断る方が常識的な反応なのかもしれません。実際、D判定からの合格率は20%から30%とされています。

でも私がなんとかできるだろうと思ったのには3つの理由があります。

ひとつめは、「私自身も落ちこぼれた高校生だったから」です。その経験があるからこそ、一見して合格は難しそうな人でも教えられるだけの知見がある、とも言えます。(⇒塾長・児玉の落ちこぼれだった高校生時代の話はこちら

ふたつめの理由はこれまでの実績です。最高D判定からの合格率は、一般的には20~30%と言いましたが、私どもの塾生に限れば6割近くになります。だから、私どもにとっては「勝算のある」ラインなのです。(ついでに申し上げれば、最高D判定からの九大合格率日本一を、これまで2回達成しております。)

※大学受験生対象の模試として高校で一般的に採用されている全統模試・進研模試・ベネッセ駿台模試の3つにおける高校3年生時の判定が(九大研の把握している限り)最も良いものでD判定であった生徒で、かつ、九州大学に合格した人の割合が100%。

3つめ、これが最大の理由ですが、話を聞きながら頭の中で何となく戦略を立ててみたらいけそうだったからです。ぱっと見で無理そうでも、本当に無理かどうかは、戦略を立ててみないとわからないものです。

具体的になにをしたのか。

まず戦略を立てました。どこでどれだけの点を取るか、そのために何をどれだけ、どう勉強するか、合格まで何を勉強すればいいかという戦略です。

九大法学部のボーダーラインから、各科目で何点とるかを決め、そのために何が必要かを洗い出していきました。詳しい戦略はさすがにここに書くわけにはいきませんが(※注)、塾では数学の個別指導を受けることになりました。個別指導の受け持ちは、相性を考えて、すでに2人受け持ってもらっていたにもかかわらず、森先生にお願いしました。

※注

これは地域紙に寄稿した当時のものです。長さの都合もあって書ききれませんでしたのでこういう表現になりました。

現在の九大研ホームページでは杉本さんのために立てた戦略を公開しています。詳しくは杉本さんの実例・声のページをご覧ください。

実際に「どんなことを教えたのか、教えてみてどうだったのか」は森先生に話してもらいましょう。

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森先生
森「基礎がわかっていないところのやり直しからやりました。なんでこの問題にこの解き方をするのか、に注目して教えていました。応用問題や過去問をやるようになってからは、とるべき問題と捨てていい問題の識別に気をつけてもらっていましたね。あとは、数学以外の科目の状況も聞くようにしていました。

全部自分で問題をやってきて、わからないところを質問する、という形式で教えていたのですが、どんどん授業の受け方が良くなっていきました。

はじめはわからない問題にメモや付箋をつけてくるだけだったのですが、そのうち「なんでわからなかったのか」を付箋に書いてくるようになって、そうなるとどんどん飲みこみが良くなりましたね。
そのころには、『これなら大丈夫(=受かる)』と思えるようになってきました。」

私は受験勉強全般の相談や数学以外の教科の質問を受けたり、国語の添削をしたりしていました。

私どもでは、「できれば毎日来て、毎日わからないところをすぐ質問してほしい」と思って、学習スペースを毎日オープンにしているのですが、杉本さんは本当に毎日勉強しに来て、毎日何かしら質問や相談をしていました。私が「これは本当に大丈夫そうだ」と思ったのはその姿を見てからでした。

それは、もちろん一生懸命勉強しているから、というのもありますが、それより大きいのは私ども教師にたくさん話してくれたからです。
経験則ですが、質問の回数や相談の回数が多い生徒ほどよく伸びるものです。それだけヒントやアドバイスをたくさんもらえるということですし、教師目線で言うなら「入ってくる情報が増える」からです。それだけアドバイスや指導がしやすくなりますし、的確にもなります。

実際、模試の判定も夏まではずっとD判定でしたが、秋の九大実戦模試ではB判定をとり、杉本さん自身も驚いていました。そして12月のセンタープレテストではA判定まで急上昇していきました。

しかし、実力的には充実してきたとはいえ、ひとつ気になることがありました。メンタルです。
受験はスポーツと同じように、本番一発勝負の世界です。だから、「弱気になると負け」という面があります。
とくにセンター試験は独特の雰囲気があります。それで、メンタルで失敗する、つまり実力よりはるかに下の点をとってしまう人が少なくないのです。
そして杉本さんはどちらかというと悲観的なタイプでした。
「なんとかしないと危ない」
と思って、森先生と対策を練りました。
日々の声かけや授業での接しかたはもちろん、本番の前日、最後に伝えることまで、いろいろ考えました

そしてセンター試験本番。目標点よりわずかに下でしたが、九大に出願するには充分な点数をとってきました。

それから二次試験までの1か月はずっと私と英語の先生が添削を、森先生が個別指導をしました。最終的には九大よりレベルの高い大学の問題も解いて、自信をつけてもらいました。

二次試験の一週間前に、驚くようなことがありました。
森「私の授業があいているところ全部に個別指導入れてください、って言われたんですけど……。」
「えーっ」と思いましたし、そんなに受けなくても大丈夫だろう、と思いましたが、「それで心置きなく受験に挑めるなら」と考え直し、またメンタル面での対策になるから良いと思い、「親御さんが良いと言ってるのなら良いですよ」と答えました。結局、そこからほぼ毎日個別指導を受けて本番に臨みました。

正直、送り出したときは大丈夫だと思っていました。本番で大きな失敗をしなければ合格するくらいの力はついていたからです。

しかし、実際の問題を見て、私も森先生も心配になりました。問題の傾向が大きく変わっていたのです。
問題傾向が変わったくらいでできなくなるような教え方はしてないはずですが、驚いて調子をくずしていないか、それが心配でした。

合格発表の日。何度目になっても落ち着かないもので、ソワソワしながら待っていたのですが、昼過ぎになって、
受かってましたー!
と言って報告に来てくれました。

そのときだったか、後日、お母さんと一緒に挨拶に来てくれたときだったか忘れてしまいましたが、
ここの塾じゃなかったら、森先生じゃなかったら、受からなかったと思います!
と言っていただいたのが、印象に残っています。

私も、たしかにそうだと思います。
傲慢だと思われるかもしれませんが、そうではありません。

だって、他の塾では断られたわけです。
それは、「自分のところでは合格させることはできない」と自分で言っているようなものなのですから。